私について

講演・研修講師、明治大学兼任講師 原由利子
これまでの道
私は福岡で生まれ育ちました。大学を卒業して建設会社に勤務していた時にアメリカ転勤の機会に恵まれ、外から日本を見る視点を得ることができました。
「常識」や「慣習」は、あたりまえのものではなく「問い直すもの」ということも体感しました。90年代のアメリカでNGOの活動に関心を持つようになり、帰国後は、仕事のかたわら、人権、女性、環境、開発の分野で様々なNGO活動に参加しました。
特に女性に対する暴力や有害な慣習の問題に取り組みたいと考え、イギリスの大学院で理論と実践の人権学を学びました。修士論文のテーマとして女性性器切除(FGM)を考えていた時、指導教官から「自国の文化の中にあるFGM、有害な慣習をテーマにしてはどうか」と提案され、日本における人身売買の問題について執筆しました(これが人身売買禁止ネットワークで活動することにつながっています)。
ジュネーブにある国連欧州本部で当時の人権小委員会に参加した際、日本のNGOが活躍していると聞いて紹介されたのが国際人権NGOの反差別国際運動(IMADR)でした。IMADRの理念と取り組みに共感し、帰国後、試験を経て職員となります。差別とレイシズムの撤廃を目指すIMADRで16年間活動し、最後の7年間は事務局長を務めました。
また、これまで4つの大学で非常勤講師として約20年間、授業を担当してきました。
これから歩みたい道
私が本サイトを立ち上げて、講演・講座、研修をさらに積極的に行なっていこうと決めた理由は3つあります。
1つ目は、闘病を経験し、これからやっておきたいことがはっきりし、これまでIMADRで学んだことを、一人でも多くの人に共有したいとの思いがあったからです。
IMADRでの活動を通じて得た最大の財産は、国内外のマイノリティ当事者との出会いです。活動を通して、また食卓を共にしながら多くの気づきや衝撃を得ました。
マイノリティは他の人より先に差別や人権侵害を受けやすく、他の人より先に闘っている先駆者から学ぶことが多くあります。特に人種・民族・出自に関わるマイノリティは、歴史的抑圧を受けてきた背景があり、それ以外の人びととでは経験や歴史、見ている風景が違うと実感してきました。
その違いを少しでも可視化したいと考え、拙書『日本にレイシズムがあることを知っていますか?』を上梓しました。しかし、本があるだけでは十分に伝わらないと感じ、講演・研修を積極的に行なうことを決意しました。
また、本のテーマに限らず、差別をなくすために世界がどう格闘して「DEI:ダイバーシティ(多様性)・エクイティ(公正性)・インクルージョン(包摂性)」の潮流があるのかなど、世界と歴史に照らして人権やDEIへの真の理解を促したいとの思いがあります。人権やDEIが日々の営みに根づいていくことが、真に平和な社会・世界をつくる確実な道だと確信しています。
新たな出会いやつながりを生む場として
2つ目には、私自身が新たな出会いやつながりを求めているためです。同時に、講演や研修、コンサルテーションなどが新たな出会いやつながりを生む場になれば、これ程嬉しいことはありません。
講演や研修は、お互いの社会的対話の場であると捉えています。
差別や人権に関わるテーマは、誰一人無関係ではいられない重要なテーマでありながら、日本では普段、人と話すことが少ないのが現状です。講演や研修に集まった方は(企業や学校の場合はなかば強制的な参加であっても)テーマに関心を持つ貴重な存在です。
そのため、貴重な機会を私の一方的な話で終わらせることは避け、参加者に問いかけ、時には隣席の方との対話を促すなど、参加型の要素を取り入れています。
研修ではさらに、テーマに沿った能力開発を意識し、より参加型の形式を採用することで、新たな出会いとつながりが生まれる場にとなることをめざしています。
新たな変化の波が生まれる場として
3つ目は、新たな変化の波が生まれる場にしたいという願いからです。
それは、感情、認識、考え方、物の見方の変化かもしれません。
また、講演や研修の帰り道で、そういえば、と過去の経験と結びつけて考えてみたり、もともと関心はなかったけれど、話に出てきた本やNGOをスマホでチラ見してみようかな、などという行動にあらわれる変化かもしれません。
人権と「DEI(ダイバーシティ(多様性)・エクイティ(公正性)・インクルージョン(包摂性)」が日々の営みの中に息づく未来は、そうした変化の波が重なっていく中にあるのではないかと思います。
さらにコンサルテーションでは、より具体的な変化を積極的に創出していきます。出会った方々と、共に悩み、希望を見出しながら、新たな変化の波を起こしていくことを楽しみにしています。
プロフィール
原 由利子(ハラ ユリコ)
講演・研修講師。明治大学兼任講師。人身売買禁止ネットワーク運営委員。
創価大学卒業後、鹿島建設勤務(米国含む)を経て英国エセックス大学人権大学院修了。2001年に「反差別国際運動(IMADR)」の職員となり、2016年まで事務局長。明治大学、創価女子短期大学で約20年、津田塾大学、清泉女子大学で各5年、非常勤講師。単著『日本にレイシズムがあることを知っていますか?』(合同出版、2022年)。共編著『世界中から人身売買がなくならないのはなぜ?』(合同出版、2010年)、『立ち上がりつながるマイノリティ女性』(解放出版社、2007年)、『マイノリティ女性の視点を政策に!社会に!』(解放出版社、2003年)、『女性差別撤廃条約とNGO』(明石書店、2003年)など多数。
*業績の詳細はリサーチマップ(国立研究開発法人科学技術振興機構ウェブサイト掲載)をご参照ください。
学術的背景
- 英国エセックス大学大学院「理論と実践の人権」修士号取得
- 明治大学を含め、4つの大学で20年以上の教育経験(非常勤)
- 単著『日本にレイシズムがあることを知っていますか?人種・民族・出自差別をなくすために私たちができること』(合同出版、2022年)の他、『世界中から人身売買がなくならないのはなぜ』(合同出版、2010年)など、共編著多数。
実務経験
- 企業での実務経験12年(鹿島建設:日本、米国2年半)
- 国際人権NGO反差別国際運動(IMADR)での多様な職務経験16年(事務局長)
- 国際・国内組織の運営、国連の人権システムの活用や行政府・立法府への政策提言、一般啓発、国内外の各種プロジェクト担当、機関誌書籍編集など多様な実務経験
特徴と強み
- 理論と実践、国際と国内を架橋する実践的アプローチ
- 企業、NGO、大学での多様な経験を活かした多角的な視点
- 国内外のマイノリティコミュニティとのネットワーク
受賞歴
2003年 赤松良子賞受賞(日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク世話人として)